何もしてないのに壊れた

たぶん、何かしてる

かわいいと思った子が阿部サダヲに似ている

いつも同じ角度で写真に写ってる女性がいた。その角度が一番自信があるそうだ。

写真フォルダには見事なまでに同じ角度、同じ表情の写真が並んでいた。インスタにアップする写真を選ぶ為に写真を10枚以上撮るのでスクロールしても同じ写真が出てくる。僕は出来るだけ慎重に、そうプレパラートを割らないようにゆっくりと顕微鏡のネジを回すように、女性に聞いた。

「こんなに無駄なギガの使い方ある?」

 

人は完全な物よりも少し欠点が在るものを好むという。完璧な美人よりも少し天然な女性を好むように。僕が好きなロックバンドにはものすごく美しい女性ボーカルがいる。しかしこの女性はある角度から見ると阿部サダヲに見えるのである。目の錯覚か、もしくはトリックアート。前提として僕は阿部サダヲがかわいいと思った事は一度も無い。例えば合コンがあったとして、女友達に今日どんな子が来るの?って聞いた時に「すごいかわいーよ。ちょっと阿部サダヲに似てるんだ」と言われたらどうだろう。恐らく阿部サダヲの個性的な演技や秀逸なアドリブ芸、さらにはバンド活動にまで至る奇才っぷりに想いを馳せた後、やっぱりかわいくはないという結論に至るだろう。それをかわいいって言うならもう何を聞いても意味ないしカテゴリーの枠が無法地帯だしこの独特の世界観、ここがあの子のアナザースカイって納得するしかない。

 

人の魅力っていうのは時折見せる笑顔だったり少し怒った顔がかわいく見えたりといった感情の表現だと思う。この女性は全部決め顔、そしてドヤ顔。このインスタを見て何を思えば良いのだろう。周りの風景とか美味しそうなコーヒーとかもう関係なくなってる。全部同じ場所に同じ角度の顔。いつもと同じ、いつもの味ってブルーボトルかなってレベル。新鮮味がないことが成功の証。