何もしてないのに壊れた

たぶん、何かしてる

「誰にも言ってないんですけど、実は私ジャニオタなんです」

新しく入ったアルバイトの女性にカミングアウトされた。それは本当に不意の出来事だった。

とりとめのない、何の生産性もない日常会話をしていたはずだった。社交辞令の入り混じる当たり障りのない会話。からの急展開。寝耳に水って本当に言い得て妙だと思う。寝てる時に耳に水を入れられたらこんな顔するよねって顔してたと思う。

ていうか寝てる時に耳に水を入れるってどんだけーと僕の心の中のIKKOが顔を出しかけたが、ことわざの語源を調べてみたら全然違ってた。川の氾濫がどうとかだった。ドSなオラオラ系王子様が「主人公の平凡な女の子」が寝てる時に耳に水を入れたのがことわざになったのかと期待したけど違った。こういうタイプのオラオラ系王子様が恋に落ちる時、だいたい「お前、ホントおもしれー女」っていうのマジトキメキの高まりがやばい。中臣鎌足くらいやばい。

 

僕は「『KAT-TUN』の亀梨くんカッコいいよね。」と返事をした。

ジャニーズに一切関わらずに生きてきた30代男性の限界が見えた瞬間だった。かろうじて「嵐」を出さなかった事でちょっと分かってる感じを出したかったのだが考えが甘かった。そう、相手はジャニオタだ。

「発音が甘いです。『カツーン』じゃなくて『カトゥーン』です」と返された。

今まで色々な叱責を受けてきたが「発音が甘い」って言われたのは中学校の英語の授業の時以来25年ぶり2度目。高校野球だったら古豪復活で話題になるレベル。

 

上司という立場上、プライベートな相談を受ける事もある。仕事上、どうしても知っていなければならない事もあるからだ。もちろん女性の上司もいるのでその人にも相談出来る。そんな中この女性は僕だけに話してくれたのだ。

 

僕は歓喜した。この「僕だけに」という特別感。あれっ、さっきくれた飴ってヴェルタースオリジナルだっけって確認したけど南天のど飴だった。「どうして僕だけに話してくれたの?」と思わず聞いてみた。「こういう気持ち分かってくれるかなって思って。2人だけの秘密ですよ。」と言われた。

 

脳内で木村カエラの歌声が聴こえた。あっ、これバタフライだ。誰かゼクシィ買ってきてー。

 

「アイドルとかすごい好きそうだから共感してもらえるかなと思って。私はジャニーズオタクですけど多分アイドルオタクですよね?」

アイドルが好きそうとかパソコンが得意そうって言うのもうやめて。確かにチェックのシャツ着てるしリュック背負ってるけど。見た目の情報分析がすごい。

 

一喜一憂って言葉こんなに当てはまることある?仮想通貨のチャートかなってくらい感情の起伏がすごい。その様子を見てた女性が、

「ホントおもしろいですねー」って言った。

 

これ、フラグ立ってる?僕はフロッグみたいな顔してるけどワンチャンあるかな。

フロックでいいから狙ってみるか。LINEブロックされてブログに書くのが落ちだけど。