何もしてないのに壊れた

たぶん、何かしてる

休日って何かしてなきゃダメなの?

「お休みの日はいつも何されてるんですか?」

 

職場の休憩所で偶然一緒になった女性社員に言われた。この女性とは「仕事で時々話すくらいの関係」なのでプライベートでの関わりは皆無だ。さて、何を話したものかと模索していると、女性の方から話しかけてきてくれた。僕は大変申し訳なく思った。何か話をしなければと思いこの質問を絞り出したかと思うと胸が痛んだ。一切興味が無いであろう「僕が休日に何をしているか」を聞くしかないという、反抗期の娘を持つ父親が共通する話題がないので仕方なく「学校は楽しいか?」と言うのと同じやつだ。ユーチューバーの話をされてもヒカキンしか手持ちがない。

 

 「特に何もしてないですよ」

僕はこの手の質問が苦手だ。何故なら休日は本当に何もしていないからだ。予定を入れてしまうと時間に縛られてしまうのがたまらなく嫌なのである。好きな時に好きな場所に行く。予約を取っても時間が迫るにつれて行きたくなくなるので美容院とか病院へ行くのも予約を取らない。「今日は予約がいっぱいで…」と言われたら待っている。結局時間に縛られる事に変わりはないのだが。それ以外はただぼーっとして身体を休めていたい。テレビやネットを見なくもないが何を見てるんですかと聞かれて、「世界の車窓から」って答えて「モロッコ鉄道の旅は神回ですよね」とか言ってくれる人はまずいないし。

 

「お休みの日も何もされてないんですか。趣味とか持った方が良いですよ。」

女性は優しく笑みを浮かべながらも少し呆れた様子で、そう、子どもを諭すかのように口にした。食べ終えた食器を器用に片付け、ふっと去る女性を尻目に僕は「趣味はフットサルとか…」と言い掛けて言葉を飲み込んだ。この「何度やっても上手く出来ないやりとり」を思い返して後悔していた。せっかく気を遣って話しかけてくれた女性に対し失望させてしまったかな。でも「お休みの日も何もされてない」って事は仕事の時も何もしてないって思っていたのかな。ダルビッシュが投げてんの?ってくらいスライダー(悪口)にキレがあった。

趣味を持った方が良いと言われたのは初めてではない。その度に人に言える趣味を考えているがなかなか見つからないのだ。おしゃれな趣味としてよくフットサルが挙げられるが僕はスポーツ全般に向いてない。高校時代は弱小バスケ部に所属していたが体力のないシューターや、家から近いという理由だけで入ってきた天才もいなかった。そもそも部活に入る気も無かったのだが「後でやっててよかったと思える日がくる」と説得されてやっていたがその日はまだきていない。公文式の方がそう思えたものだ。

 

英会話なら仕事にも繋がると勧められて習っていた時期もあった。

しかしコミュニケーション能力の低い僕は日本語でもコミュニケーションを取る事が難しいのに、それを英語でとか控えめに言ってそういうタイプの地獄でしかなかった。狭い教室、苦手な講師、伝わらない言葉、進まない時計。縮まらない距離感、埋められない温度差。「腐敗した世界」ってグーグルマップに入力したらたぶんここにピン挿さると思う。

 

まず休日に予定がある人はリア充で予定がない人は暇人みたいな風潮がある。フェイスブックやインスタグラムのせいで余計にそうなっているのだろう。休日もこんなに充実してますよアピールがすごい。「リア充はネットから出てけ」とか「リア充爆発しろ」とか言ってた時代が懐かしいほど、今では充実してる人はリアルでもネットでも充実している。SNSによってみんなが休日に何をしているかがすぐに分かるようになったからこそSNSをやっていない人が何をしているか不思議でしょうがないのだろう。今後はSNSを見ることでその人の価値観や人となりを見ていくことになる。そうなるとSNSをやってない人はもう軽く不審者扱いだ。素性が知れないというのは恐怖でしかないだろう。ではSNSをやったら良いと言われるだろうがこの問題はそんなに簡単ではない。進研ゼミでやったやつじゃないからだ。自分の私生活をインターネットに挙げるというのがどうしても抵抗がある。Twitterでよく「FF外から失礼します」っていうのを見かける。これは「フォロー、フォロワー」でない人の事らしい。つまり知らない人が急に失礼しますって言ってきて困っていたら助けてくれる事もあるってそれどこの花沢類だよって。「F4」なんてアドレスバー開く時以外に使うことないと思ってたよ。