何もしてないのに壊れた

たぶん、何かしてる

女性が多い職場で働くということ

よく、男性の友人に言われる。女性が多い職場で羨ましいと。出会いがたくさんあっていいなと。

僕は見ていたTwitterから視線を外し、丁寧にiPhoneの電源を消して、大きく、ため息をついた。

「ちょっと待って」とつい先程まで見ていたTwitterに引きずられながらも、優しく、しかし明確に否定した。

確かに出会いは多いだろう。しかし、それは女性に声を掛けることができる男にとってはだ。僕のように文化祭の最終日にみんながフォークダンスを踊っているなか、伝説の木の下でしか告白できない系男子にとっては無意味でしかない。

 

この、「女性が多い職場」で仕事の成果を出すというのはかなりの難易度だと思う。仕事なので嫌なことを言わなければならない機会も多い。資格と実務経験を必須にした方が良いと思われる。ユーキャンにあったら人気が出るだろう。就活生は安易に「潤滑油」と口にするが、その謎の油は結構大変なのだと伝えていきたい。

 

まず、女性はお喋りが大好きだ。いつ見ても会話をしている。よくそんなに話すネタがあるものだと感心していたがよく話を聞いてみるといつも同じ話をしている。再放送かなってくらい同じ話をしているのだ。何の話をしているかというと基本的にはスイーツとダイエットの話のようだ。美味しいスイーツを食べたい、でもダイエットもしなきゃいけないという鶏が先か卵が先かみたいな話だ。それを休憩時間が終わるまでしている。次の日もだ。記憶力が鳥頭なのかと思ってしまう。

 

次に女性の変化には敏感でなければならない。髪を切ったとかネイルを変えたとか。明確な見た目の変化ならまだ分かる時もある。しかし些細な変化が困る。女性なら分かるみたいだが鈍感な僕には全く分からない。クイズ番組でこの画面の中でどこかが変わってますっていうのと同じ。いつも勘で答える羽目になる。これは金の正解かな、銀の正解かなって感じで答える。間違っていたらもうおしまい。何で気付かないの?って不機嫌になる。そうは言ってもヒントが分かりにくい。ネクストコナンズヒントくらい分からせる気がないのかなと思う。

 

あと、イケメンが大好きだ。普段女性ばかりの環境というのもあるが職場に男性が来た時にはちょっとした騒ぎになる。通りかかった他の部署の人が「今日は何かのお祭りですか?」って聞いてくるくらい。少し前に「佐川男子」みたいなのが流行ってたが、イケメンの配達員がきたら誰が対応するかでモメる。インターホンが鳴った瞬間のスタートダッシュ。ボルトのような加速。お手本のようなコーナーリング。ここでも9秒台出てた。「イケメン」という追い風参考記録だけど。

 

配達員ならすぐに対応が終わるのでまだ良い。イケメンの営業マンが来た時は大変だ。だいたい3社から4社くらいで来てもらって簡単な会議やコンペをするのだが、日時は決まっているので誰が対応するかを決める。実際は1人で大丈夫なのに「あと1人どうする?」って2人で相談してる。相手が3人来ることが分かってるので人数合わせを誰にするか考えてるのだ。完全に合コンと履き違えている。

 

結局、3人で会議をすることになった。男女3対3のテラスハウスのシステムだ。不安しか無いが会議は上手く進めてくれないと困るので素敵なお家(会議室)と素敵な車(社用車)だけは用意しておく。台本(レジュメ)は一切ない。

 

女性達は見事なまでに会議を進めていく。一瞬、どっちが営業マンかなってくらいグイグイアプローチしてるようにも思えたが。さっきまで昨日見たドラマの話をしながらグダグダとスープ春雨を食べてたとは思えない。グータンヌーボだと思ってたらちゃんとテラスハウスみたいになってた。どこかからテイラースウィフトが聴こえる気さえした。キラキラ女子に変身した女性達は商談を上手くまとめてくれた。この後、2次会に行くそうだ。今の会議は1次会(合コン)と捉えてたようだ。こうなるともう何を言っても聞こえない。僕の声は副音声でしかなくなる。